佐藤順子は、苗や野菜をつくり、直販も手がける農家である。朝6時、自宅の畑で育てた様々な野菜を七間朝市に並べると、
カラフルな売り場にお客さんたちの足が止まる。自分で育て、自分の言葉で魅力を伝えていくことを大切に、
新しい形の農業を切り拓く、新進気鋭のつくり手だ。
小説を愛する農家の少女
代々、土打で農業をしてきた家に生まれました。うちは野菜の苗農家で、主に家の仕事を取り仕切っていたのは父。子どもの頃から、忙しい時期にはよく家の仕事を手伝っていました。稲刈りとか、苗仕事とか、パック詰めとか。でも、農家には絶対になりたくないと思っていました。作業自体は嫌ではなかったんですけど、手伝いがあるせいで遊びに行けなかったり、友達と予定が合わなくなったり。椎茸を栽培していた暗室では、収穫しようとつかんだのがナメクジだった!!なんてこともありましたね。なんでこんなことせなあかんのやろう、子どもなのに、と思っていました。家の農業を手伝いながら本屋にも勤めていた母の影響もあって、本に興味を持つようになりました。将来は小説家になりたいと思っていましたね。
大学生の頃には、自分で小説を書いて投稿したこともありました。でも、職業として小説を書くのは難しいと思うようになって、「書くこと」に関係する仕事ができたらいいなと考えるようになったんです。