山内李佳は大野にケーキ店をオープンさせたばかり。ケーキ作りに、接客に、毎日忙しく過ごしている。
碁盤の目の片隅で、彼女の店は明るく大野を照らしている。
つくる楽しさ あげる喜び
ケーキ屋になりたいと思ったのは小学校5年生の時です。家でお母さんと一緒にケーキを作っているのが楽しくて。そして、作ったものを友だちにあげると喜んでくれるじゃないですか。
それがまたうれしくて。中学生になってからも、よくケーキを作っていました。作ることが本当に好きだったし、勉強が苦手だったのもあって自分の道はこれしかないという思いが日々強くなっていきました。高校2年の頃に、迷うことなく製菓の専門学校に進路を決めました。誰にも相談はしなかったです。
「勝手に飛び出していく」という感じでした。親は何も言わなかったけど、祖父母からは「早く帰ってこい」と、言われました。申し訳なかったと思います。いざ、大野を出るときはうれしさとか、不安とか、何もなくて「ただ出ていくだけ」といった感じでした。