川端慎哉は建築士である。大野の中心地、元町にさりげなくたたずむビルの3階に建築事務所『明倫舎』を開き、
大野に建つ数々の住宅と店舗を設計してきた。
「手に職を」を意識したのは
大野に帰るつもりだったから
子どもの時は大工になりたかったですね。父親が大工でしたから。でも僕が高校に入った頃は何というか「トレンディ」な時代で、僕もトレンディな方へ向かっていきまして。今はもうないけど、大野高校の商業科に進学して、簿記を頑張りました。で、せっかくだからトレンディな会計士になろうと思って福井で経営とか会計の専門学校に通ったんですが、なんか簿記も違うな、と思うようになってしまいました。なんでしょうね。せっかくオシャレな方向に進んでいたのに。就職してしばらくすると突然、「大工だ」と思っちゃったんですよ。モノつくりがしたいと思ったんです。元々、おじいちゃんもお父さんも大工で、ひいおじいちゃんは木地師だし、手仕事の血が騒いだのかな。まあ、学生の頃に必死に勉強した会計の知識は、今すごく役立ってますけどね。
専門学校に進学した時も、東京に行こうって気はなかったですね。福井が好きだったし、友だちも福井にたくさんいたし。あと長男だったから、いつかは帰ってこなくちゃと思ってたってのもありますよね。会計士になろうと思ったのも、大工とか建築士になろうと思ったのも、いずれ大野に帰ったときに手に職がないと厳しいと思ったからなんですよね。