川端慎哉 明倫舎建築事務所 代表

川端慎哉は建築士である。大野の中心地、元町にさりげなくたたずむビルの3階に建築事務所『明倫舎』を開き、
大野に建つ数々の住宅と店舗を設計してきた。

「手に職を」を意識したのは
大野に帰るつもりだったから

子どもの時は大工になりたかったですね。父親が大工でしたから。でも僕が高校に入った頃は何というか「トレンディ」な時代で、僕もトレンディな方へ向かっていきまして。今はもうないけど、大野高校の商業科に進学して、簿記を頑張りました。で、せっかくだからトレンディな会計士になろうと思って福井で経営とか会計の専門学校に通ったんですが、なんか簿記も違うな、と思うようになってしまいました。なんでしょうね。せっかくオシャレな方向に進んでいたのに。就職してしばらくすると突然、「大工だ」と思っちゃったんですよ。モノつくりがしたいと思ったんです。元々、おじいちゃんもお父さんも大工で、ひいおじいちゃんは木地師だし、手仕事の血が騒いだのかな。まあ、学生の頃に必死に勉強した会計の知識は、今すごく役立ってますけどね。

専門学校に進学した時も、東京に行こうって気はなかったですね。福井が好きだったし、友だちも福井にたくさんいたし。あと長男だったから、いつかは帰ってこなくちゃと思ってたってのもありますよね。会計士になろうと思ったのも、大工とか建築士になろうと思ったのも、いずれ大野に帰ったときに手に職がないと厳しいと思ったからなんですよね。

僕の「大野へかえろう」

大工を始めて地元に帰り、たくさんの親方のもとで大工の修行をしました。それが21歳くらいかな。「一人親方」として、個人でハウスメーカーや工務店の下請けをして稼ぐ暮らし。34歳くらいまでは、棟梁として大工専業だったんですけど、ハウスメーカーや設計事務所の図面に書いてあれば、自分がそんなに良くならないと思っていても、そのとおりに作らなきゃいけないのが嫌で。20代後半から、自分で設計図を書いて、自分で建てたいと思うようになりました。それが建築士を目指すことになったきっかけですね。

二級建築士は、建築の実務経験が8年必要で、条件を満たすと同時に受験。合格後、4年間の実務経験を積んで受験資格を得て、すぐに一級建築士の試験にチャレンジし、2年目に合格することができました。建築事務所を構えるにあたって、まちの中心地に事務所を出すことにはこだわりましたね。変化していく大野のまちの中心に、自分の会社があればいいなって思います。本当は明倫町でやろうと思っていたから、『明倫舎』って名前にしたんですけど、いろいろあって元町でやってます。

今は建築事務所の建築士、ということになってますけど、僕は現場から出た建築士なので、しょっちゅう現場に出ますよ。やっぱり自分の手を動かして作る楽しさがあるし、設計するおもしろさもあるし、全部ひとりで見られるのもいいですね。軌道に乗るまでは、家賃と家族の食べる分だけは稼がなきゃいけないと思っていたから、なんでもやりましたよ。もちろん大工仕事も。始めるまではすっごい不安で危機感いっぱいだったけど、やってるうちに大工時代の人脈とか友だちとか、いろんな人たちが設計の仕事をくれるようになってきて、やってみた方が気が楽になりましたね。

離婚率0%!!
家族が仲良くなる家づくり

大野で建築を仕事にするのは、結構難しいですよ。小さいまちだから仕事がどんどん来る訳じゃないし、逆に事務所の規模が大きくないから、一気に来るたくさんの仕事に対応しきれないときもあります。冬場は雪が降るから仕事が減るし、仕事量のバランスが難しいです。やっとつかめてきた感じですね。

でもちょっと自慢があるんですよ。僕が建てた新築住宅は、離婚率0%!!家づくりって下手すると、夫婦や家族の間に大きな溝ができてしまうんですよ。お互いの価値観が衝突しがちなんですよね。僕は設計から予算管理・施工・引渡しまでのプロセスをトータルで管理しているので「じゃあこっちは旦那が決めて、奥さんこっち決めたら?」ってアドバイスしたり、無理なローンにならないよう提案してみたりとか、ちょっと踏み込んだところまでケアできるんですよね。大手のハウスメーカーだったら、そんなこと気にしてられないでしょ。こうして数字で結果が出るって面白いですよね。一方で全部ひとりでやるから、工程のそれぞれについての専門性は足りないところがあるかなとも思ったり。技術の進歩もすごいから、日々勉強ですね。インテリアデザインも、話題の店に行くとか、その道のトップランナーと付き合うとか、最新の事情から遅れないように気を付けています。自分の設計したものが何もなかったところに出来上がって、そこに人がずっと住んでる・・・。それってすごいことですよね。

家族で暮らす毎日が楽しい
釣りにもすぐ行けるし!

共働きです。奥さんは調理師で、給食のおばちゃんをしてます。それも小さい頃からの夢だったみたい。

子どもは2人。子育てが楽しくてしょうがないですよ。僕も、子どもが行きたいところに行きたい。趣味は釣りですね。朝の4時くらいに釣りに行って、8時くらいから仕事できちゃいますから。行こうと思えば行けるこの環境が最高ですね。釣りのおもしろさを再発見しました。

最近、小2の子どもが建築家になりたいと言い始めたんですよね。うれしいですね。

大野のまちを
作っていくひとりとして

事務所を始めた時から、雇用を作りたいとは思っていたんですよね。今、スタッフとして1人、若い子が入ってくれていますが、ちょっとずつ大野で雇用を増やすことが目標です。まちづくりもやってみたいですね。いろいろイベントに誘ってもらったりしていて、積極的に参加してます。おしゃれなカフェとかも出来たしね。個人のお店がたくさん出来て、大野がこれから、おもしろく変わっていくという期待はありますね。若い子が何か始める時に、お手伝いできるといいなと思っています。

川端より、若い人たちへ

今、大野で建築をやってる若い子が少ないので、外から帰ってきて、専門性が高い技術を持っている子なんかは充分大野でやっていけると思いますよ。会社に雇用してもらうとなると、大野に仕事あるんかなと不安かもしれないけど、技術があれば大丈夫。

大野という場所を生かして起業などもしてほしいですね。チャレンジャーにとっては素晴らしい場所だから。まだ誰も注目していない、すごいチャンスの芽がここにはたくさんあるから、自分で見つけて、発信していってほしいですね。

  • 休日の過ごし方
    お酒が好き!最近はウイスキーを
    きゅっと飲んでガッと寝ちゃいます。
  • 川端慎哉

    1974年生まれ
    明倫舎建築事務所代表

  • 休日は子どもと遊ぶのと、釣りがマイブームです。あと、日帰り温泉も。

  • 休日の過ごし方

    お酒が好き!最近はウイスキーをきゅっと飲んでガッと寝ちゃいます。休日は子供と遊ぶのと、釣りがマイブームです。あと、日帰り温泉も。

  • 川端の経歴

    大野高校(商業科)→ 簿記の専門学校(福井)→ アパレル会社(福井)→ 大工(大野)
    → 『明倫舎』設立

  • 川端の一日

    6:00
    起床
    7:30
    仕事へ
    午前
    現場回りが中心
    昼〜
    打ち合わせなど 設計や事務作業
    18:00
    帰宅
    子どもの宿題を見たり、遊んだり
    遊んだり
    19:00
    夕食、入浴 
    22:00
    就寝
  • 川端の座右の銘

    謙虚に慎ましく 明倫舎建築事務所 川端慎哉